平成26年6月2日  最近の中国内部情勢

●中国の「一人っ子政策」の終焉
  80年代から強化された「一人っ子」政策で男女の出生率が異常化し、2000年代に花嫁の売り手市場が出現(三種の神器がなければ、まともな結婚ができない)
中国の賃金水準は2010年第以降、日本の30%を超えてきたが、住宅価格は日本とほぼ同じ水準まで高騰。
稼ぐためには手段を選ばない風潮が一段と高まり、環境・食品などあらゆる面での不正事件が続発。‘衣食住足りて礼節を知る’の言葉さえ生まれてきた。‘贈収賄事件’も続発。
昨年の「全人代」中国のトップになった習近平がまず実施したのは、
①汚職の摘発・・・本年から内部告発に賞金制度を導入。
②二人っ子政策(原則は両親のどちらかが一人っ子の場合)


●中国不動産バブル崩壊か(日経ビジネス2014.5.19)
  中国国家統計局が公表した本年1〜3月期の不動産販売額は前年同期比5.2%減の1兆3263億元(約21兆7000億円)。このうち住宅販売に限ると7.7%減。
不動産企業の収益も悪化。大手の一角、万科企業の2014年1〜3月期の営業収入は前期比32%もの減少。
4月以降も落ち込みは大きく、中国では5月上旬の国慶節休暇に最も住宅販売が盛んになるのだが、香港の不動産大手、中原集団研究センターの調査によると、5月1日〜3日までの3日間で、主要54都市における新築住宅の販売面積は23万6000㎡と前年同期比47%の減少。北京・上海・広州・深センの沿岸4大都市では52%減。とくに北京では8割減。
理由は、習近平政権の腐敗取り締まりの強化で、大需要家の官僚による購入減。最近の元安で海外の投資家が引き揚げた・・・
中国の地方政府にとっては不動産開発が重要な資金源。各種の住宅購入促進策を打ち出してきたが、今のところ効果なし・・・


●習近平に残された時間はあと4年間
中国共産党の最高幹部(チャイナ・セブン)
①習近平(60歳) 太子党・上海閥‐胡漢民派
②李克強(58歳) 共青団     
③張徳江(67歳) 上海閥     
④兪正声(68歳) 太子党
⑤劉雲山(66歳) 共青団
⑥王岐山(65歳) 太子党
⑦張高麗(67歳) 上海閥


中国共産党の最高幹部は5年に一度の党大会開催時点で68歳が定年。従って、4年後には3位以下はすべて総退陣する。
その後は胡錦濤(共青団)派閥の復活が予測される。
限られた時間内での党内粛清(現在の手段は汚職摘発)は反感を呼び、従来からの貧富の格差の異常拡大と経済成長鈍化に伴う国民の不満をそらすため、海外に目を向けた海洋進出計画および、軍部の反発に対処しての軍事費の拡大策を打ち出す。
本年の中国の国防費は、前年比12%増の13兆円 日本の約4倍
各国の過去10年間のGDPと軍事費の推移(ストックホルム国際平和研究所、国際通貨基金から)

米国 GDP2004年12兆2770億ドル
軍事費2004年5534億ドル     
2013年16兆7990億ドル (+37%)
2013年6402億ドル (+16%)
日本 GDP2004年4兆6550億ドル
軍事費2004年612億ドル      
2013年4兆9010億ドル (+5%)
2013年486億ドル (-21%)
ドイツ GDP2004年2兆7290億ドル
軍事費2004年477億ドル      
2013年3兆6350億ドル(+33%)
2013年488億ドル (+3%)
中国 GDP2004年1兆9310億ドル
軍事費2004年635億ドル      
2013年9兆1810億ドル ( 4.8倍)
2013年1885億ドル(3倍)
ロシア GDP2004年5910億ドル
軍事費2004年409億ドル    
2013年2兆1180億ドル ( 3.6倍)
2013年878億ドル ( 2.2倍)


●まだまだ大きすぎる米・中の戦力差
 中国と米国の戦力比較

  中国 米国
総兵力 228万5000人 152万人
大陸間弾道ミサイル 72基 450基
最新型戦車 2830台 2785台
航空母艦 1隻 11隻
戦略ミサイル原潜 4隻 14隻
攻撃型原潜 5隻 58隻
爆撃機 112機 155機
第四世代戦闘機 913機 3020機


●中国の古臭い装備と低いモラル
 《陸軍》
人民解放軍は現在も長距離移動訓練で戦車や大砲の運搬に貨物列車を使っている(世界の常識は空輸)
人民解放軍の兵員数は世界一だが、今や兵士の7割以上は「一人っ子」世代。この世代は、他人には疑い深く、その一方では自分で責任を取ろうとはしない。訓練では脱落者が続出。‘だからこそ指導者にタカ派が多くて危険’との見方も。

 《海軍》
中国の今年の国防費は8,082億元(約13兆円)で前年比12%増。その増加
分の多くは海軍の増強に振り向けられているが、現在はまだ、その運用能
力は低い。
現状では、アジア最強の日本の海上自衛隊に比べると、戦闘スキル、訓練、
兵器の技術水準等で日本に及ばないが、あと数年で兵器の技術水準だけは追いつきそう。

 《空軍》
現在の中国の戦闘機は航続が短く、ステルス性能(第五世代)もない第四世代戦闘機でスホーイSU27が中心。
航空機生産技術もまだロシアに頼っているが、国産技術も育ちつつある。
ロシアは4年前に、最新鋭のスホーイSU35の供給を約束しているが、い
まだに実現されていない。理由は中国が自前のシステム開発を急ぐあまり、ロシアのエンジン技術を真似たり盗んだりし続けているので(SU27がライセンスなしで中国の戦闘機=殱11=に変身)トラブルが絶えないため。

「中国崩壊前夜」長谷川慶太郎氏の見方 東洋経済新聞社5月1日初刊発行


●中国政府と7代軍区の対立
 瀋陽軍区、北京軍区、済南軍区、南京軍区、広州軍区、蘭州軍区、成都軍区


●軍部と繋がりの深いシャドウバンキング
シャドウバンキング(影の銀行)は中国社会科学院発表では約3万社、資金総額では20兆5000億元(約348兆円)とされ、ここで発行される金融債権は年利5〜10%
この資金の多くは不動産投資やシッピングローン・粗悪工場建設等に回されてきた


●習近平の登場で、軍部を抑さえこむ対策にシャドウバンキングの整理に取り組む
これは軍部への凄まじい圧力になった
最大軍区の瀋陽軍区は政府に屈服した(北朝鮮 張成沢の粛清にも繋がる)
だが、他の軍区ではまだ抵抗が続き、防空識別圏の設定や南シナ海紛争等、政府と深く打ち合わせのないままの行動を通じ、軍事費の増額を狙う


●シャドウバンキングの整理で早まる『バブルの崩壊』
日本円で600兆円を超えるとされるバブルの崩壊は、日本のバブル崩壊よりも深刻で、体制そのものの崩壊につながる危険性が強い





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