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顧客が検討にかける時間が長引いている。消費増税後の景況感が見通せず、ローンの返済計画などに悩む人が増えているからだ。
消費増税前の駆け込み需要後も好調な販売が続いている分譲マンションに対し、注文住宅は反動減が止まらない。住宅の引き渡しが4月以降でも5%の現行税率を適用する特別措置が切れた昨年10月から、大手各社の受注額(速報値)は前年実績を1割以上下回るペースが続いている。
2月の受注額は積水ハウスが32%減り、パナホームも19%減。ともに減少率は1月より拡大した。戸建て業界では「年末には反動減は収まる」との見方が大勢だったが、年間を通じても「13年度の受注額が12年度を下回りそう」というハウスメーカーもある。
戸建てが想定以上に落ち込んでいる理由は、マンションとの業界構造の違いがある。大手の寡占が進むマンションに対して戸建ては大手でも市場シェアは数%。激しい販売競争で需要を一気に先食いした。
さらに消費税の負担感の差もある。住宅を買う場合、消費税は建物部分にだけかかる。地価の高い都心のマンションは土地代の割合が高く、郊外の戸建てなどに比べ負担感が軽い例も多い。都心では、建物部分の価格が3割程度というマンションもあるという。
実際、都心の分譲マンションは好調だ。野村不動産は新宿御苑近くに建てた約1000戸の高層マンションを「記録的なハイペース」という約5カ月で完売した。20年の東京五輪開催も追い風だ。三菱地所は東京・晴海の高層物件の売れ行きが回復。今月上旬に約900戸を売り切った。
不動産経済研究所(東京・新宿)の調べでは、13年の全国の新築マンション発売戸数は12%増え、6年ぶりに10万戸の大台に乗った。14年も4%増と堅調な見通し。
4月から住宅ローン減税が拡充され、税額控除は10年間で最大400万円と2倍になり、中低所得者向けの現金給付もある。みずほ総合研究所の試算では「年収400万円と800万円以上の世帯では増税後に買ったほうが得になるケースもある」。今後も一定の需要は見込めそうだ。
マンション業界では、不安の種は足元の販売より、建築コストの上昇だ。コンサル会社のトータルブレイン(東京・港)によると「現場の職人不足の影響で工事期間が従来より6カ月以上延びる傾向にある」。各社の課題は「建築コストの上昇を販売価格にどう転嫁していくか」(東急不動産の三枝利行常務執行役員)。値上げは需要を冷やしかねず難しい判断になりそうだ。力強さを増す景気の回復基調は、消費増税の壁を乗り越えられるのか。
(日本経済新聞 H26年3月14日 朝刊14版) |
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