平成25年9月10日  最近の中国事情

取引商社駐在員リポートを抜粋して掲載させていただきます。



6月
中国でのバブルが終焉に近づいて来ているのだろうか? 過去数年間に驚くべき数のマンション着工、ビル建設があまり計画性のないままに進められてきた。今となってみると極端な地域で、一人当たりの保有可能平均戸数が130戸となっている地域もあるという。上海でも摩天楼のようにそびえ立つビルが、夜になると真っ暗になる光景も今となっては良く見る景色である。
最近、高鉄(中国版新幹線)のお偉いさん(社長)が賄賂で捕まり、その個人情報がネットで公開された。本当かどうか定かではないが、ネットの記事では保有マンションが300を超えている、と。
また、その記事の横には、マンション保有数300超えの中国人は全国で6000人超、と。誰であるか、までは書かれていないが、殆どが共産党幹部や、企業経営者であろう。
何を意図してマンションを買うのか? は一目瞭然であるが、驚くべき事はその保有数である。
さらにその記事に対して中国人のツイートは、非常に興味深い。
この一年で多くのビルやマンションを所有していた企業経営者や、共産党幹部が次々にそれらを手放し始めていると言う事である。
一般国民には、安く手放す事は不動産価格の下落を招くから、秩序を保つように下限を設定されているにも拘わらず、彼等は危ないと知ってからか、次々に手放しているようである。
今回、私の携帯(中国での登録品)にも今までに無いほどの不動産売りこみ、マンション購入のセールス電話が鳴った。異常な位にである。
何も言わずに切るのが常だが、しつこくかかってくる輩には一喝した。
それでもかかってくる始末である。彼等も何かに取り付かれているのか、懸命なのである。
銀行の新規預金の獲得営業もかなり本格的になって来たという。預金金利を上げて、他行からの口座振替を狙っていると言う。巷で話題になっているシャドーバンキングの問題や、香港とのインチキ取引など、このような事が長く続くようでは中国経済も危ないと感じる。
ただし、ここは中国である。
共産党の動きが鉄のカーテンに掛かって見えない以上は、そう簡単にバブル崩壊する事も無いであろうとも思える。ただし今回分かった事は、情報の早い中国富裕層たちが、少しずつ何かを感じ始めていると言う事。
その中で足の速い人間が、早めに不動産を手放し始めたと言う事であろう。
もしかしたら鉄道会社の社長は、私欲に走り過ぎたが為に、党員の心理を読み損ねて訴えられたのかもしれない。
現在農繁期中であり、一旦中国の木材生産は休暇に入っております。ほとんどの工場が稼働していない中、大きな状況の変化はありません。


7月
上海の地に着いた時、どっと汗が吹きだした。気温は38度、機内で聞いただけで暑い。しかし体感温度はそれ以上に感じた。いわゆるヒートアイランド現象である。
日本でも内陸部では、この程度の気温になる事は最近では珍しくも無いが、ここ上海で感じる温度は熱いだけでなく、息苦しさを感じる。高層ビルの乱立、カン高い声で話す人々、想像を絶する車と人の往来、行き違う人の体臭、全てが息苦しい。
地方へ出れば、その温度は平年並みとなるが、ここ上海は格別である。
日傘を差す貴婦人も今や日傘の本来の効果は発揮しておらず、ただのファッションとなっている。ここ数年は、政府の規制により、ビルやマンションの無駄な投資建築は減っているようだが、相変わらず空っぽのビル、あるいは殆どが空き部屋のマンションは多い。
かつて存在した、不動産業者が立ち並ぶ通りも、半分とは言い過ぎか? シャッターで閉じられた店が多い。
流行に敏感な若者は新しい商業施設に通い、かつて栄華を誇った百貨店は閑古鳥が鳴き、今回の訪問では閉鎖し、取り壊しが始まっていた。
またこの地に新たな商業施設が建つという。無駄だ。何もかもが無駄である。 この地に何年地に足をつけてという考えは、最近の経営者の中には無いのか?
とにかく儲からなければ辞める。儲かる可能性があるのであれば、博打を打つ。我々日本人には到底考えられない根性である。
そんな中でも、私が何年も前から通いつめている日本食屋がある。
さして綺麗でもないし、旨くも無い普通の日本食レストランである。
そこの利点はサービスにある。
数ヶ月に一度しか行かない私の顔も名前も覚えてくれている。
日本では当たり前のサービスがこの店にはある。何年も前からである。
このような店こそ次なるリピーターを呼び、口コミで広がっていくのだろう。
値段の高い店が良い店、と判断する中国人には、この感覚が生まれるまで後何年かかるのか?
あるいは人種そのものが違うから、根本的にこの考えは持たないのか? それは分からない。
土産物を買いに久しぶりに日系のデパートに足を踏み入れた。
地下の食品街には日本からの輸入食材が所狭しと並び、あたかも日本にいるような錯覚を覚えてしまうぐらいである。このデパートもだいぶ古いが盛況を来たしており、買い物客がレジ前で行列を作っていた。日本をどこかで牽制している彼らだが、自分の体に入るものは安心な日本産が良いのだろうか? 何とも難しい人種である。
かなり極端な話だが、内蒙古のとある都市では、人口の1万5千倍の戸数のマンションが在るという。 一人当たり平均でならして、1万5千戸所有である。
これを簡単に無駄だと言えるか? ここまでくると話しにならない愚かさも感じる。
この内蒙古に誰が投資をし、誰が住むのか? 何の計画性も無い考えにうんざりする。
また、北京の一等地で約500所帯の小さな物件(マンション)が最近販売された。
5000人が朝から殺到し、約5分で完売した。部屋を選ぶ余裕も無いのだが、買う人間は住む為の物ではなく、あくまで投資物件なのである。
こんな話がまだあるうちは、どんどん風船が膨らんでいけば良い、と海を越えた我々は一つのネタで終わってしまうのであるが、爆風は一挙に海を越えてくるに違いない。
米国債を一番所有する中国は、最後の一手で米国債の売りに走るかもしれない。
それを恐れる米国が中国の経済危機を見放す事も考えにくいが、風船そのものが大きいだけに、いつかは大爆発が起こる事は誰の目から見ても明らかだろう。中国政府を訝しい眼差しで見ている国民も、目先の金利で銀行に金を多く預けている。それが使えない物となる事を全く予想していないし、その時は何とか国が助けてくれるとも考えているのだろうか。
この国は事実上一党独裁である。鶴の一声で全てが決まる。
民衆の爆発が起こるのが先か?それとも国が最後の一手を打つのが先か?

非常に苦しい時期に来ている事は、今回も肌で感じている。
上海の気温はもう38度、暑い気温にぬるいビールがのどを通る。
38度線を北上するのか、南下するのか? 中国は厳しい選択肢を迎える事となる。


8月
今回は、中国レストラン事情をお伝えします。
中国レストラン (ある地方都市の在り方:一般的なレストランもあまり変わらない)
まず、入口にドアマンが居ます。この人は一日中ドアを開けたり閉めたりする人であり、最も外気を感じる人です。冬は寒いのでフル装備しております。
中国でいらっしゃいませ(歓迎光臨!!)と言う人は、主にこのドアを開け閉めする周りに居る人達です。
多い所では、左右に3名ずつ位居ます。もちろんそれ以上の所も以下の所も有ります。
とんでもない声を発する店も最近では増えてきており、中には、開店の前にラジオ体操のような体操をした後に、発声練習が有ります。これはどこも相当気合入っており、これは一見の価値ありです。
また、体操も独特な体操で有り、体をくねらせたり、大きくジャンプしたりと、基本的に無駄な動きが多いです。
さて、席に通されて、接客係がやかましく茶碗や箸を全ての人に用意します。ガチャガチャと激しく音をさせ、私は一生懸命やっています、のアピールが激しいです。
これはどんなに静かなレストランでも、地方都市では当たり前です。
いよいよオーダーですが、とにかく考えている時も常に横に居ます。
御注文がお決まりの頃に、なんて言う、日本式の接客係は居りません。どんなに悩んでも、我々の注文が有るまで、そこで立ち止まっております。時には、しかめっ面で壁に体を預ける人もいます。
そして食事が入ってきます。
ガラスの円卓にガチャンと音を立てて次々に置いて行きます。
このような扱いを受ける食器類は、当然欠けている物も多く見受けられます。そんなの構っていたら何も始まりません。日本人として、味付けである、塩や醤油を要求すると、約30分程して来ます。 しかも大量に。
一度摺りニンニクを要求した時の量は半端無いものでした。 香辛料はこんなに要りません。
食べ方は、基本的にはマナーは無く(年配者から箸を付けるとかの最低限のマナーは当然ありますが)、 遠くの皿でも箸を伸ばして、汁を他の皿に垂らしながら自分の口に持って行くスタイルです。
その席で、上位で無い人が円卓を回すのは失礼との事なのでしょうが、汁を他の惣菜に垂らしてはいけません。

話しながら食べるので、良く口から食べカスが飛びます。
また、食べカスの骨や皮は、手元の皿を無視して、皿の隣の空いているスペースに仮置きします。
エビや魚の好きな人の光景は、見てて美しいものです。自分の皿の廻りにコンモリとエビの殻と魚の骨が山積みです。それを給仕に片付けるようにお願いすると、給仕の方も手際よく、銀のボールにハケのような物で、綺麗に片付けて行きます。
食事が終わった頃には、床には煙草の吸殻、ビールの空き瓶、食べカス、ひまわりの種、落花生の皮などがそこら中に散乱し、本当に人間がここで食べていたのか? と思うほどの絶景が広がります。
大都市では少しずつでしょうが、我々でも抵抗なく食べれる店が増えてきておりますが、地方都市では今でも中国の原点が見れます。
こんな中国の事情を知っている人も多いでしょうが、私の個人的観念で記述しておりますので、御理解を頂きたくお願い致します。



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