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ベートーヴェン「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第9番イ長調op47 《クロイツェル》」
平成24年11月7日午後7時より大阪・いずみホールで、若き名ヴァイオリニスト・吉田恭子さんのリサイタルが開催されました。
私は縁あって大阪や神戸での彼女の演奏会にはいつも足を運んでいるファンなのですが、彼女は現在の自分に満足することなく、次々と新境地を切り開いている芸術姿勢に心を打たれています。
今回の演奏会も事前に産経新聞に大きく紹介・掲載されていました。
『知的な曲解釈で聴かせるヴァイオリニスト・吉田恭子が11月7日、大阪市中央区のいずみホールでリサイタルを行う。ベートーベンの中期の代表作、ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」を中心としたプログラムを組んでいる。
クロイツェルはベートーベンが悪化する難聴に悩み、自ら命を絶つことを考えたことを告白する「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いた翌年に完成した作品。吉田恭子は「死への思いを克服してベートーベンの高い志や生きることへの思いが込められ、生き生きとした細胞のひとつひとつを重ねたような、ひたむきな響きの美しさがある。コンサートを直前にした今、内的なものを求められているような気がして私自身も極限まで追い込まれている感覚です。」
この作品と対比させるために、遺書が書かれたその年に作曲されたベートーベンの「ロマンス第一番」も演奏する。重音が美しい優雅な一曲で、恭子はアメリカの抽象表現画家・マーク・ロコスが病床にあって自殺する直前に残した作品の淡い色合いの絵画との共通点を「病気との闘い、死をも覚悟する苦しい状態を超えて、美しい作品が描かれているように思う」と話す。』
という事前の記事が私の今回の演奏会の興味を大きく駆り立てました。
パンフレットに掲載された吉田恭子さん自身の解説にも、このクロイツェルについて、
『生涯に10曲のヴァイオリン・ソナタを残したベートーヴェンですが、特にこの「クロイツェル」は王者の風格を持っていて、古今東西のヴァイオリン・ソナタのなかでも最高傑作とされています。1803年に作曲され、初演はウィーンでベートーヴェン自身のピアノとジョージ・ブリッジタワーのヴァイオリンで披露されました。絶望的な状態で「ハイリゲンシュタットの遺書」を残した翌年にあたるこの年は、交響曲第3番[英雄]の作曲など、失意のどん底から奇跡の復活を遂げ、力強い人生を歩みだしたころです。
また、この作品は、後の芸術にも大きな影響を与え、なかでもロシアの文豪トルストイはこの曲に感銘を受け、精神的・肉体的欲望の葛藤の末、夫が妻を殺すという悲劇の小説「クロイツェル・ソナタ」を書き、また画家ブリネによって、愛欲に憑りつかれた男女「クロイツェル」という絵が描かれました。
技術的にも高度なテクニックが要求され、奏者は精神的にも体力的にも極度の緊張が強いられる類稀な名曲です。
献呈が初演のブリッジタワーではなく、当時フランスで著名だったヴァイオリニスト、ルドルフ・クロイツェルに捧げられているのは、出版の頃、同じ女性に夢中になってしまったことから仲違いしてしまったからでした。ただクロイツェル自身がこの作品を演奏することはなかったそうです。』
一曲の音楽が人の人生観を変え、文豪の小説になったり、名画になったりする音楽って凄い!と思い、その名曲に聴き入りました・・・が、凡人には到底解らず時間が過ぎて終わってしまいました。
第一楽章はとにかくベートーヴェンの人生の矛盾や心の葛藤、病との闘い、決して果たし得ぬ恋の苦しみなどを表現しているんだろうなぁ・・・第二楽章に入るとそのなかにも自分を抱いている大いなる自然への畏敬の念と心の安らぎ・・・第三楽章では結局は・・・というように、素人のソナタに対する勝手な思い込みで、必至に聴きました。・・・がずるずると終局を迎えてしまいました。
当日の演奏は他に
ベートーヴェン「ロマンス第1番ト長調op40
シューベルト=リスト「ワルツ・カプリーズ第6番《ウィーンの夜会》
ラヴェル「ツイガーヌ」
でした。
私の部屋には数年前に楽屋で撮った恭子さんとの写真が貼られていますが、恭子さんも初めは写真立てに入れているとのことでしたが、結婚し、子供さんも出来、もう行方不明になっているんだろうなぁ・・・。
吉田恭子さん、こんな難解な名曲を理解し、聴衆に伝えていくってホントに凄い。
因みに吉田恭子さんは宮中でプライベートで美智子妃殿下と共演を楽しんだり、出光財団の支援を受けて小学校を巡回し音楽の楽しさを教えたり、最近では毎年夏には世界の名アーチスト数人を軽井沢のソニー大賀ホールに呼んで、小・中・高の音楽を志す生徒に公開音楽指導をしたり、大活躍です。
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