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この四つのテストの創案者であるハーバート・テーラー(ハーブ)は1893年アメリカミシガン州で生まれ、イリノイ州のノースウェスタン大学卒業後、アメリカ海軍補給部隊に入隊した後、オクラホマの石油会社に勤めましたが、一年後に独立して保険・不動産・石油リース仲介業を始めました。
行動家で、信仰心厚く、道義を重んずる彼は成功を収め、ある倒産寸前の調理器具メーカーの再建も引き受けることになりました。
信仰心の厚いハーブは、大恐慌下のもとでの、会社の建て直しの手段として、社員たちに倫理的価値観の目安となる簡潔な指針を考えました。
社の倫理訓としておよそ100語からなる文章をしたためましたが、これは長すぎると判断し、さらに推敲を重ねそれを7つのテストにまとめました。
しかし、それでも長いと考えた彼は自問式の4項目にまとめ上げ、今日の四つのテストになったのであります。
社長のハーブは、出来上がった項目を会社の4部門の部長に諮りました。その4人はローマカトリック信者、クリスチャンサイエンティスト、正統派ユダヤ教徒、長老派教会員という人たちでした。四つのテストが自分たちの宗教上の協議に反しないばかりでなく、私生活ならびに職業人としての生活の模範的指針になるものであることで、意見の一致を見ました。
そして、この四つのテストを会社全体で実行させ、見事再建を果たしたということです。
四つのテストは極度に単純化された哲学であり、その有用性は疑わしく、相矛盾する趣旨からなっており、目標は非現実的である、と真剣に考える人はたくさんいるのも事実です。
また、真実、公平さ、思いやりに対する強調は、道徳的要素を多く含んでいるため、「倫理的不消化」を起こしてしまう人たちも多くいます。
四つのテストはビジネスという、厳しく、変転きわまりない世界で生まれ、経済界が経験した最も過酷な時代の中で、厳密な試験を経て、生き残ってきたものです。
1942年、当時のRI理事のシカゴのリチャード・ベナー氏が、ロータリーもこのテストを取り入れるべきだと、提案しました。
RI理事会は、1943年1月にベナー氏の提案を承認し、四つのテストを職業奉仕プログラムの一つの構成要素としました。
このテストは今日では奉仕部門すべてにおける不可欠の要素として認識されています。
真実かどうか?・・・真実は不変であり、時代を超越するものです。真実は正義なくして存在しえません。
みんなに公平か?・・・顔を突き合わせて激しくやりあうビジネス手法に代わり、公平さを取り入れたビジネスは、お互いの関係の向上に役立ってきました。
好意と友情を深めるか?・・・人は生まれながらにして、他者と協力して生きていく存在であり、愛情を示すことは、生来備わっている本能です。
みんなのためになるかどうか?・・・食うか食われるかを原則とする無慈悲な競争を排除するものであり、それに代わって建設的で創造的な競争を導入するものです。
資本主義制度の全体構造そのものが、信頼というものに大きく依存しています。
つまり、ビジネスに携わるすべての人たちは、お互い同士だけでなく、大衆や消費者や株主や従業員とも、公平かつ誠実に対応する信頼関係に依存しているのです。
現代社会が今いちばん必要としているものは倫理的誠実さであるといって良いでしょう。
四つのテストは、人々が価値ある目標を追い求める際の指針として活用できます。
その目標とは、友人を探し選び、その友人関係を維持すること、回りの人たちと友好関係を築くこと、幸福な家庭生活をつくりあげること、高い倫理的・道徳的基準を設定し身につけること、自ら選択した事業や専門職で成功を収めること、よき市民となり、次の世代にとって良き手本となること、といったことです。
簡潔さの中に多くが語られ、感動的なまでに力強く、実のある成果を必ずもたらすこの四つのテストは、緊張と混乱と不確実性に満ちたこの世界のただ中に、清新で明るさにあふれた未来への展望を与えてくれるのです。 |
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