❶ 昨年の中国不動産販売の大手 恒大グループの経営危機で中国の不動産バブルも遂に崩れるかといわれたがいまだに大きくはくずれていない。
◎ バブル崩壊の三つのレッドライン 不動産販売企業の場合(20年8月に示された)
① 竣工前販売代金を除いた総負債比率(総負債÷総資産×100)が70%超
② 純負債資本比率(有利子負債から現預金を控除したもの÷資本×100)が100%超
③ 現預金短期負債比率(現預金÷短期負債×100)が100以下
中國の不動産販売トップ31社のうち 該当ナシは5社だけ 全項目 該当が 9社 2項目 該当が 5社 1項目 該当が 12社
◎ 21年1月から金融機関に対し、住宅ローン融資額の上限が設定 この年夏に「恒大」経営危機
❷ 住宅価格は下げ場面に入っているが、まだそれほど大きくは下げていない。日本のバブル崩壊は一般に「半値・八掛け・二割引き」と言われ、頂点から一気に3割まで落ち込んだが、中国の現在の住宅平均価格(90㎡)の年収倍率は、全国で6.9倍、北京で18.5倍、上海で15.1倍とゆるやか。
❸ 中国の不動産バブル崩壊の速度が緩やかなのは、その売買形式による
◎ 中國では不動産の個人売買は原則禁止されている。とくに土地の売買は地方政府の独占で、地方政府は経済発展の資金を得るために土地利用権を競売にだす。つまり、常に売り手は一人、買い手は多数の売買になる。
◎ 落札したデベロッパーは、地方政府に土地使用権利金を払って不動産開発をするが、物件(住宅・商業施設)を取引する過程で契約税・土地増価税・都市土地使用税等を地方政府に払わなければならない。だから政府にとっては土地・不動産は高ければ高いほど良いわけで、必死に値崩れを防いでくれる。これら不動産関連収入が地方財政に占める比率は、2020年の統計で江蘇・貴州・安微・浙江・山東・四川など13省で40%を超え、最高は浙江省の55.5%に達する。
❹ 新しいチャイナセブンの当面する問題
◎ 新しい時代を迎える党内の軋みにはまだ異常なものがある。105歳の党内最長老 宋平(鄧小平時代の常務委員)から異論が出たり、公安関係の粛清もこれからだ。対外的には西側諸国との調整も難しく兎に角、前を向きながら後ろに行進しなければならないし、国内経済も不動産バブルに関連して、地方銀行の倒産にからむ取付け騒ぎもでてきた。
(佐治 成男 氏)
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