我が社の歴史を語るには彼森田氏をおいて語ることは出来ません。
彼は1927年生まれ、1943年当初前身の小野製材所に入社し、徴兵され戦後横尾薫が横尾製材所として再興すると駆けつけて、横尾薫の片腕となって粉骨砕身会社の発展に尽くしていただきました。
横尾薫亡き後32歳の私横尾泰治が継いだ訳ですが、よくもこんな若僧について大番頭としての役目を果たしていただいたと、感謝の気持ちでいっぱいです。
60歳になると我々の引き留めも聞かず引退され、悠々自適の道を選ばれ、趣味の川柳でその道の大家になられ、お手紙に添えてその川柳作品を良くいただいたものです。
その作品群は実にお人柄の良くでおり、哀愁の中に負けん気の出た作品で、その一端を披露して感謝を込めてご冥福をお祈りします。
~~~ 組句集 平城 ~~~
想いまだとどかず麦の穂が揺れる 席蹴って出た暗闇の雨しきり 傘寿もう嘘染め直す彩がない わたしからいつかこぼれているあなた
泣きたいのになぜか微笑む癖がつき 沈黙の闇が溢れてくる気配 悶々の果て人間に還る朝 煙は天にやっとお楽にならはった 生さぬ仲音を殺して逢いにゆく
二で割った答は呑めぬ意地がある 向き合って話して遠い人と知る しなやかな思索が点を線にする 感情の隙間に入り込む殺意 北満の夕陽が消えぬ青春譜
東西南北みなありがたい友がいる 無駄骨を独りで拾う帰り道 弥陀に慈悲貰いつづけているいのち 灰汁抜けて男の眉がやわらかい 鮮やかな敵意白紙で来た返事 夢ばかり追う老犬の冬景色
和夫抄
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