紅茶の文化は、世界の歴史を動かしたといっても過言ではないほどです。
紅茶の原型ともいえる発酵茶が登場したのは、一〇~一三世紀ころ。なぜ、茶葉が発酵されるようになったかは謎に包まれています。一説には、シルクロードや海路を通ってのアジアや西洋諸国へ、輸出が急に広まり、その輸送に時間がかかり、緑茶が自然発酵したといわれています。
初めてヨーロッパに茶というものを伝えたのは、オランダの東インド会社ですが、それは紅茶ではなく緑茶でした。当時のオランダは東洋貿易を独占しており、イギリス貴族の間で茶が飲まれるようになってからも、肝心の茶はすべてオランダから買わねばなりませんでした。
これをよしとせずイギリスは、オランダ本国からの茶の輸入を禁止する法律を一六六九年に制定しました。これがきっかけとなって、「イギリス・オランダ戦争」が中断しながらも二二年間、続きました。茶は、戦争を引き起こしたのです。
結局、イギリスはこれに勝利し、中国福建省にイギリス東インド会社を置くことに成功しました。イギリス国内で独自の紅茶文化が発達したのは、この福建省に集められた茶が、すべて紅茶に似た半発酵茶だったことによるそうです。
さらに紅茶は、大きな歴史的変化をもたらしました。アメリカの独立につながったとされる一七七三年の「ボストン茶会事件」は、紅茶がきっかけです。イギリスの制定した茶会例に反対して、ボストン港に停泊したイギリス東インド会社の茶船を、ボストンの植民地人が急襲し、三四二個の茶箱を海に投棄した事件です。この事件を機に、ほかの港で同様の事件が連続し、最終的にはアメリカの独立戦争へと拡大したといわれています。
このように、紅茶は歴史上、大きな役割と影響を人類に与えたのです。
ロータリー卓話より
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