新型コロナウイルスの感染拡大で、都市の脆弱性が浮き彫りになりました。
「都市で暮らすことには良いことと、コスト(代償)と両方ある。人間は一緒に集まって共同作業をしたり、話をしたりする生き物だ。考えやアイデアを交換し、それが様々な発想やイノベーションのもとにもなった。こうした営みは人類の発展に絶対必要だ」
「一方、都市化の代償といえるのが感染症だ。定住化後に文明や都市が発達したことで、人類はコレラ、チフス、ペストなど感染症の問題をずっと抱えてきた。特に都市に集まって一緒に住んでいる限り、そのリスクはつきまとう」
――人類史のなかで、今回の新型コロナの問題はどんな意味を持ちますか。
「人類の祖先のホモ属が生まれて200万年、ホモ・サピエンスが進化してから20万~30万年がたつ。100万人が住むような大都市が出てきたのはせいぜい数百年にすぎない。生物の進化の長い時間を考えると、新型コロナは最後の一瞬で起きたようなものだ」
「現在、世界人口78億人のうち都市に住む人は50%を超す。半分以上の人間が密集しており、人類史的に見て異常な状況だ。それが当たり前になっているから、異常さに気づかないだけだ。都市をつくることで、大規模な自然破壊をしているのだが、そのことも意識されていない」
――新型コロナはどんな変化をもたらしますか。
「皆、心の中では『(都市型)のこうした生活はおかしいのかもしれない』と感じていたと思う。その意味で、リセットの機会ではある。例えば、家に対する考え方は変わるはず。本当に東京のど真ん中で高層マンションに住む必要があるのか、考え直している人はいるでしょう」
総合研究大学院学長 長谷川真理子氏
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